「マイナス入札」について、埼玉県深谷市と室蘭市の例が池上彰さんの「ニュース検定」で紹介されました。
マイナス価格で小学校体育館を売却した深谷市と、同じくマイナス入札で施設建物を売却した室蘭市の例をお伝えします。
スポンサーリンク
「マイナス入札」が池上彰の「ニュース検定に」
朝tのテレビ番組グッドモーニングの「ニュース検定」のコーナー、クイズ形式で現代の出来事を出題、人気キャスターの池上彰さんがわかりやすく解説で伝えるというものです。
今朝は、それに「マイナス入札」が出題して取り上げられました。
その内容を番組に添ってお伝えします。以下は番組のナレーションです。
「マイナス入札」埼玉県深谷市と北海道室蘭市の例
マイナス入札を行った例は、これまでに2例です。
埼玉県深谷市の小学校の体育館のある土地、それから北海道の室蘭市の、旧総合福祉センターの建物と土地です。
小学校の体育館 埼玉県深谷市の例
埼玉県深谷市がマイナス価格の入札で売却したのは、深谷市にある、旧小学校の体育館です。
廃校になった後放置されていました。それを深谷市が去年末になって売却しました。
---
それまでに、通常の有償での売却で、入札を2回行いましたが、参加者がおらず、そのままでは誰も買わないことが分かったので、方針を転換して敷地も含めて「マイナス795万円」とすることにしたのです。
池上さんの解説では、それを「つまり市がお金を払って買ってもらったんです」と表現していますが、マイナス入札というのは、自治体がお金を出すという意味です。
以下は番組でのやり取りです。
深谷市は支払っても「元が取れる」
女性のアナウンサー:
「お金がもらえるなんて、落札業者はラッキーですよね」
池上:
「そう言えるかどうかわからないですよ。実はね条件があるからです。落札業者は自分で建物を壊し、住宅を建てる必要があるのです。
今回の入札では深谷市は795万円支払っても、元が取れると計算しています。
実際に住宅ができれば固定資産税などの税収が、今後10年間で1700万円ほど入ってくると見込んでいるからです
解体費に多額の費用
建物が放置されるのは解体に多額の費用がかかるからです。
これはどこの自治体にとっても悩みの種となっています。実際に、解体を検討している公営住宅や学校などの公共施設は全国に12000棟以上もあるのです。
自治体の中では、手持ちのお金だけでは提出できず、地方債、つまり、借金をして解体するケースも増えています。
更地にしても買い手が見つからないこともあります。人口減少背景に地下が下がり続けている地域が多くあるからです。
北海道の室蘭市の公営施設売却
深谷市に続き北海道の室蘭市でもマイナス価格入札を実施しました
旧総合福祉センターの建物と土地について、落札者が解体をすることが条件で、市が881万円を支払う形で入札されたのです。
落札したのは、北九州市の老人ホーム運営会社さわやか倶楽部。このあとはその土地に有料老人ホームを建てる計画だということです。
マイナス入札の理由
番組の説明は以上です。
深谷市のこのケースはこれが全国初のマイナス入札であり、土地を売るのにお金を出すということは、これまでならありえないことです。
なので、市はなぜ売却をするのに費用が必要だったのかということを広報で詳しく説明しています。
市側の説明のポイントは以下の通り
・解体費がかかるのでその分を市が負担する
・解体費を負担しても、住宅を建てる条件付きで売買する
・宅地として利用されれば、1700万円の税収が見込めるため無駄な出費ではない
・建物を放置しておくだけでも実は費用が掛かっているので、有償でも売却が最善の方法
市がお金を出した理由は、つまり、「解体費がかかる」ためで、解体費の分を業者が自身で負担するとなると、その土地を売ったとしても経費がかかり過ぎて合わないということなのでしょう。
なので、その分を元々の所有者である市が負担することで、売買を成立させようという狙いでした。
一戸建てについても解体費負担は同じ
これを聞いて、ひじょうに特殊な例だと考える人は、都市部にはおられるかもしれませんが、地方は、個人所有の戸建てにおいては、これはほぼ当たり前のことになっています。
最初から、解体費を込みの売却額として、150万円から200万円を差し引くということでなければ、空き家付きの土地は売れません。
築20年を過ぎれば、値はつかず、言葉は悪いが「粗大ごみ」と同じです。1千万円近くを出して買う建物がボロ家では、はたして買いたい人がいるでしょうか。
関連記事:
田舎の実家空き家は相続しないで売る!売れなければ有料の処分に
更地にするのがダメな理由は固定資産税
家の分を渡すのではなく、最初から更地にした方がわかりやすいではないかと思われますが、いったん更地にすると固定資産税が6倍になってしまいます。
そのため、売買が成立するまで家は残しておくということもまた常套手段となっています。
これが空き家が増える一つの要因になっています。
リフォームの良し悪し
売るにはリフォームをするという手もありますが、これも深谷市の例と同じで、お金をかけてしまっても売れるか売れないかわかりません。
万が一売れない場合は、かけたお金を捨てることになってしまいます。必ずしもそれで利益が上がるという保証がないのです。
また、リフォームというのは、必ずしも相手の好みに合うとは限らないので、その分をお金で渡す、すなわちあらかじめ値引きをして「現況のまま」として、売りに出す方が買い手にとっても良いことです。
それならば、買い手の方も、まだ家が使えそうならそのまま住むなり、あるいは、余裕があれば家を解体して建て替えるなど、買い手の予算に応じた自由な選択ができます。
リフォームをして売る、というのは、よほど流通の良い地域に限られると思っておいてください。売れないかもしれない家、安くしか売れない家にお金をかける人はいませんね。そのため、古家のままで解体費を差し引くのです。
都会にあってはめずらしいことですが、地方では特別なことではなく、やり手の不動産業者ほど、この辺りの採算をきっちりつけて値段設定をします。
その方が、スムーズにスピーディーに売却できるためです。
"高値"を付けた古家は売れない
先日、私たちが今住んでいる家を業者に見てもらいましたが、その方は、地域でナンバーワンの成績でした。
その場合の値段設定は、今売れないで他社のサイトに残っているものよりも、確実に数百万安いものでした。が、幸いにして私も夫も、その価格設定の理由が十分理解できました。
築年が古い中古住宅の売り物件に不当に高い価格がついているのは、所有者が買った時の価格にこだわるためです。今は以前とは相場が違います。高値を付けた古家はけっして売れるということはありません。
どこかで見切りをつけないことには、ずっと売れないで持っているだけになり、やがては相続人が苦労することになってしまう。そしてそこまでの維持費を考えたら、数百万安くても損とは言えないのです。
地方では土地を高く売るということは、もはや望めません。早く売るということが、もっとも高値で空き家を売る最善の方法だということを、深谷市と室蘭市の例が如実に示しているといっても過言ではありません。