相続登記は義務化されるのかどうかということが、土地や家屋を所有する方々の心配の一つとなっています。
前年、全国に所有者不明の土地が九州の面積に迫るほどの広さで、日本全国に広がっていると報道されました。
そうなると、相続登記は義務化されることになってしまうのでしょうか。
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相続登記の義務化とは
所有者不明土地は全国に410万ヘクタールあるとされ、九州本島の面積約370万ヘクタールを上回ることが明らかになり、衝撃が走りました。
それを受けて、おそらく相続登記は義務化の方向へ行くだろうということを書きました。
しかし、相続登記の義務化には、当初考えたように、所有者不明土地を直ちに減らすほどの実効性がない、従って、義務化や罰金という可能性も低いということがわかってきました。
おそらく、今後も義務化はないというのですが、その理由を詳しく調べてみました。
相続登記の義務化がない理由
相続登記が義務化されるとなると、売れない土地を持っている人でも、相続が発生した後は、費用をかけて登記をしなくてはならなくなりますし、登記をしないという選択肢もなくなります。
すなわち、要らない土地、売れない土地でも、何が何でも登記しなくてはならないとすれば、所有者にとっては困った状況です。
なので、今後義務化が発令されてしまうのかどうかは、今後、売れない土地の相続を予定している人にとっては大きな関心事でした。
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所有者不明土地はなくならない
そして、多くの人たちも、所有者不明土地があまりにも多いため、義務化するべきだろうという意見を述べたわけです。
しかし、専門家は、義務化が解決にはつながらないと言います。それはなぜでしょう。
それを述べたのは、国土交通省「所有者の所在の把握が難しい土地への対応方策に関する検討会」委員長を務めた山野目章夫教授です。
それにしても、この検討会の名称の長さにも、まだまだ、問題が新しく、解決の糸口がはっきりしないという問題の大きさが現れてもいないでしょうか。
対策として有効なら「相続登記義務化を推進する会」で済むのですが、対策そのものが不明確であるという印象です。
相続登記しても所有者不明土地が減らない理由
ともかくも、その会で山野目教授がいう義務化が解決にはつながらない理由とは次の通りです。
全国で相続未登記のケースは山ほどある。未登記の人をいちいち摘発することは可能なのか。義務化の実効性はないだろう。
そもそも、この問題が浮上したのは、震災後の土地の復興を目指した土地に、所有者不明の土地があまりにも多くて手が付けられないというところからでした。
それと、相続登記がどう絡んでくるのでしょうか。
所有者不明土地の問題
登記そのものはされていて、誰かの名前は土地の所有者として書かれているが、それが明治時代のもので既に亡くなった人の名義のままになっている、あるいは、書かれている人のところに連絡をしようとしても連絡がつかない、そういったものが、所有者不明土地であるのです。
誰の名前も書かれていない土地ならいいのですが、名前があるにもかかわらず所有者がはっきりしないところが問題です。
名義人の名前が書いてあって、その人、またはその相続人に連絡がつかなければ、その土地の売り買いはできないし、住むことも利用することも金輪際できなくなってしまうというのが、所有者不明土地の困った問題なのです。
所有者不明土地の所有者をたどる方法
明治時代からの所有者不明土地の所有者を特定るうために、亡くなった人の子孫を調べようとしたら、どうやら、50名以上になることが予想されるとして、そのような時はどうしたらいいのでしょうか。
それを調べるとしたら、どのようになるのでしょうか。
所有者を戸籍から探す困難
現在、私の夫の実家では、父が亡くなった後の預貯金のための相続の手続きを行っているところですが、何度か転居をしていることが予想されており、それは息子も妻も詳しくはわからないということに気がつきました。
そうすると、どこに戸籍の申請をしたらいいかが、身内でも把握ができないことになります。
ですので、A市の戸籍を取ってきた。次には、そこに記されている住所のB市に行って、今度はB市の戸籍を取得する、そのような方法で調べるということになります。
自治体も身内も所有者の特定が不可能
これは土地の相続登記においても同じことです。
いくらデータ化されてオンラインで取得できるとなっても、一人ですらその手間ですから、多数になれば、自治体とはいえ一区画の土地それだけにかかりきりになっていることはできません。
では、それを「義務化だから」といって、誰か一人に登記するように言ったとしても、その後の相続登記は依頼した専門家でもできなかったという例も報告されています。
専門家でもそうなら素人では無理なことは言うまでもありません。
所有者不明土地は「慢性病」
結局、山野目教授は次のように言います。
所有者不明の問題は、いわば慢性の病。未登記の状態が長く積み重なってきたため、根が深い。特効薬を注射すればたちまち治るというものではない。漢方薬のような対策にじっくり取り組まなければならず。世代をまたいだ息の長い話になる。
つまり、九州の面積に匹敵するような所有者不明の土地を多く抱えたまま、何とか対症療法のような策を、その都度考えて進んで行くほかはないということなのです。
相続登記をすすめる施策
だからといって、そのまま放っておいては、未登記の土地が増えるばかりになってしまうでしょう。何かできることはないのでしょうか。
それに対しての対策は、相続登記の啓発とノウハウ提供ということを教授は提案しています。
・各自治体の役所に相談窓口を設ける
・司法書士につなぐ他、ガイドブックを準備して、自分で申請できるようにもする
・登録免許税を減らすかなくすなどして、登記をする人の負担を減らす
相続登記の当面の義務化と罰則はない
そして最後に心配なところとして、相続登記をしなかった時の罰則ですが、
場面によっては相続登記をしなければ過料が課せられるとするのもあり得ない話ではない。ただ補完のように出てくる話だ。
となっていますので、教授の談話を読む限りで、登記の義務化がすぐに起こるとも思えません。
しなかったことに、罰則があるかというと、そのように厳しくなるという当面の心配はなさそうです。
教授も「登記しなくてもさしあたりの問題が起こらないとなれば、登記しない」という、消極的な方法を挙げており、この点は、少し安心できるかもしれません。
空き家特別措置法の方がコワい
空き家特別措置法に関しては、これはもう法律になってしまっていますので、特定空き家に指定されてしまった場合は、必ず勧告が来て、強制的に費用が掛かることになります。
今のところ相続登記に関しては、その心配はありません。当面心配なのは、空き家特措法の方です。なぜなら、庭木の選定だけでも、10万円から20万円はかかりますし、解体は、150万円から200万円です。
つまり、費用が断然大きいですし、こちらは罰金ではなくて、実際的な費用ですから、必要となったら、必ず徴収される羽目になります。
まとめ
このあとは、相続が多発して空き家も空き地も爆発的に増えます。
空き家も未登記もいずれめずらしいものではなくなるでしょう。ここも空き家、ここも未登記となれば、未登記にかまっている状況ではなくなります。
罰金がないのは一見いいようですが、それだけ地域も土地も空き家や空き地で荒れ果て、無管理、無秩序な状態になるということなのです。
そしてそうなってからでは、土地も空き家も売ろうとしても、全く売れなくなってしまいますし、地方では既にそうなっています。売れたとしても、地価は半分から10分の1というようなところも少なくありません。
当ブログでもお伝えしているように、それまでに空き家も土地も何とか売り抜くことが肝要です。
売れるとなったら、相続登記をしないものは売れませんので、その時までは未登記で所持しようとも、買い手が決まったら、結局必ず相続登記はすることになります。
逆に言えば、未登記のままの空き家は「空き家の負け組」です。登記をしないということは、その土地に価値がなく、売れないということを前提としているからです。
やむを得ず、未登記のまま持ち続けようという結果になるより前に、空き家がいくらで売れそうか査定に出してみましょう。
空き家は早ければ早いほど、高く売れ、手離すことも容易なのです。
一括査定というのは、複数の業者の入札、いわゆるオークションと同じです。
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