地方の土地の地価は下がり続けてとどまるところを知りません。
このような土地を相続させても、そこに住むならともかく、売るに売れないことになってしまいます。
先月、叔母が私の実家のあったのと同じ団地に所有していた更地の土地を売り終えました。
ただ同然の値段でもなんとか売れたのですが、売れない地域の土地に叔母はどういう方法を取ったのか。その次第をお伝えします。
震災後に家を解体して更地に
叔母のところが家を売りに出したのは、震災後まもなく、今から6年前です。
損壊の大きかったところは士が解体のための補助金を出したため、それで更地にして不動産屋に仲介で依頼したのです。買った値段は昭和58頃で土地だけで700万円だったと聞いています。
家を解体した後、売りに出して間もなくの頃に、早くも買いたいという話があり、「その時だったら400万円で売れたのに」と叔母は少し残念そうに言っていました。
旦那さんが「700万で買ったんだ。そんな値段で売れるか!」と言って、400万でも売却を断ったのです。他の多くの人と同様「急ぐことはない、高い値段で売れるまで待とう」と思ったのですね。
値下げをし続けた土地の値段
ところが、数年経っても買いたいという希望者はない。それで、値段を泣く泣く下げることになりました。
というより、もっと下げたいといっても、不動産屋さんは「最初から極端に下げない方がいいですよ」と言って、応じなかったそうです。
叔母の家は、数年前に不動産サイトで見たときには、値段は300万でした。
もう少し経って同じサイトを見ると、価格は200万円に下げられていました。坪数は70坪以上ありましたので、当時坪10万だったところが、3万以下の値になったことになります。
相続で保有する家は3軒に 増える固定資産税
幸い、叔母の場合は震災関連の特例を受けたので、更地にしても固定資産税はそのままで、6倍になることはなかったとのことです。
それにしても、叔母は介護のため同居した親の家、その他にも老後移住しようと当初予定した土地を持っていて、更に子どもが住むまでの間は実家を貸して管理もしていましたので、自分の住んでいる他に、3か所固定資産税を支払っていました。
また、近所に気兼ねをして草取りの手間も大変なものだったようです。更地にしたからといって管理をしなくてもいいわけではないのです。
空き家を解体すると更地の固定資産税が6倍になるというのは本当か
「あの時400万だったら売れたのに」
そしてとうとう、私が同じ団地の実家を売ったというのを聞いて、とにかく値段にこだわらずに手離そうということになったのです。
誰も買わないのなら、自分で持っているか、誰かに譲るかのどちらかしかありません。
幸い欲しいと言ってくれる知人がいたので、その人に譲ることとなりました。そこに住みたいというのではなくて、お金持ちの人だったので、安く買って上乗せして売ってもいいと思ったようです。
叔母によっては、売れて良かったのには違いありませんが、今思うと「400万だったら売れたのに」という状況があったということも口惜しく思い出されたようです。
700万円で買った土地が、400万円になり、そこから6年後には、ほぼ無料の処分価格となってしまったわけなので、手放しでは喜べるものではありません。
もう地方の地価が戻ることはない
人口の減少により、家余り、土地余りの時代が、そこまで来ています。
既に土地は財産ではない、しかも価値が定まったものではなく、持っているだけで固定資産税の支払いに元本割れ同様、目減りしていくものなのです。
「もう少し高く売れないか」、あるいは、「その値段でも欲しいという人が居るはずだ、もう少し待ってみよう」と考えがちなのですが、そうして待っている間にも地価は値下がりし、人口減少で需要はますます減り、一層価格を下げざるを得ない事態に陥ります。
土地に値段がつかない地方の現状
36年前に買った700万円の土地が、30年後には値上がりどころか400万円にしかならなかった、というのは、もちろん驚きでした。
しかし、それからたった6年後には、ただ同然で譲ることになった。
しかもそこに住みたいという人ではなくて、お金持ちの知人というあくまで投資目的の相手で、そこに住みたいから買いたいと名乗り出る人は、最後までとうとう見つかりませんでした。
その上で、土地を手離せてよかったと喜んでいるのが、地方に現実に起きていることです。地方の地価はもう戻ることはないでしょう。売れない土地には土地活用もあり得ません。
相続した土地が、まだ値段が付く地域にあるのなら、市況のいいうちに現金化しましょう。それがおそらく相続した土地に価値を持たせるいちばん良い方法です。